専門技能コミュニティー

賢い人は自分の過ちから学ぶと言われている。もっと賢い人は他人の過ちから学ぶ。しかし、もっとも賢い人は他人の成功から学ぶ。

─ 禅の格言。ジョン・C・マクスウェルにより改変

専門技能コミュニティーの概要

専門技能コミュニティー(Community of Practice:CoP)は、チームメンバーとその他の専門家から構成される非公式のグループであり、プログラムまたは企業というコンテキストの中で活動し、関連する1つ以上のドメインの実用的な知識を共有することを使命とする。CoPは、新しいものでもなければ、アジャイル開発で必須のものでもない。しかし、価値のストリームを中心に足並みを揃えるというリーンの方法は、価値納品向けに最適化されている(これは良いことである)。その結果として通常は、時間が経つにつれて、リーンな企業は、縦型の機能単位の組織から、もっと素早く価値を納品できる、より柔軟な横型の事業ライン単位の組織へと転換していく。さらに、SAFeでは、価値のストリームの中に、長期にわたって割り当てられた人から構成される、寿命の長いアジャイルリリース列車(ART)を作成するよう言っている。プログラムは違ってもたいていは同じ報告系統に属しているある分野の実務者たちが(組織が横型になっているかどうかにかかわらず)、定期的に集まり、そのドメインの管理者や専門家の指導のもと、自分たちの専門スキルを向上させていくと、何が起きるであろうか。SAFeのCoP(Spotifyの用語でいうとギルド[1])に参加してみてほしい。

詳細

リーン-アジャイルでは、企業内に、価値納品を促進するための、機能横断的なチームおよびプログラムを作成することを推奨している。同様に、リーン思考では、さまざまなスキルを持つ人を価値のストリームを中心に組織化することを重視している。しかし、開発者はチームのコンテキスト内外の他の開発者と話をする必要があるし、テスト担当者は他のテスト担当者と話をする必要があるし、プロダクトオーナーは他のアジャイルチームの同等の人と連絡を取る必要がある。広い範囲のさまざまな人によって提供される、複数の経験やさまざまな種類の実用的知識を利用するには、これが非常に重要である。それによって、技能と粘り強い知識獲得が進み、新しい手法や技術の導入が促進される。

このようなチーム間のコミュニケーションは専門技能コミュニティー(CoP)によって進められることが多い。これは、チームや専門家のグループをまたがって効率的な知識共有や調査をするために特別に設計された、非公式のワーキンググループである(図1)。

図1.  専門技能コミュニティー: メンバーはいつもは自分のアジャイルチームで働いているが、その他に定期的にベストプラクティスを共有する

専門技能コミュニティーの作成

リーンな企業は、専門技能コミュニティーが有益である領域を特定し、コミュニティーを作成したあとは育成し支援する能力を持つ。

CoPは、臨機応変に、必要に応じて作成することができる。常設であるかどうかは任意であり、現在のニーズやコンテキストに応じて結成したり解散してもかまわない。たとえば、自動テストCoPであれば、スキルを向上したいと思っているテストエンジニアと開発者から構成することができる。アーキテクチャーと設計のCoPでは、創発的設計、インテンショナルシステムアーキテクチャー、継続的インテグレーション、リファクタリングなどのプラクティスの導入が促進されるだろう。また、アーキテクチャー滑走路の構築と保守のための作業をサポートしたり、テストや配置のしやすさを重視した設計を促進したり、古いプラットフォームの廃止準備をしたりするかもしれない。さらに、アジャイルコーチングや、継続的インテグレーション、継続的納品、コーディング標準、その他の新しいプラクティスやプロセスに関して、CoPが作成されることもある。同様に、さまざまなアジャイルチームのスクラムマスターがCoPを結成して、ファシリテーションのベストプラクティスや生産性の高いアジャイルチームを構築した経験について、情報を交換することもある。

専門技能コミュニティーの運営

それぞれのCoPの特徴となるのは、メンバーの知識の専門性である。通常は、CoPごとに具体的な学習目標とロードマップとバックログが存在する。構成員は流動的であり、メンバーの役割が変わったり、新しいニーズが生じたり、メンバー個人が必要な知識を得たりするのに応じて変化する。CoPは、外部の主導で育成されることも、自然発生的にできあがることもある。たいていは自己組織化するが、リーダーやスクラムマスターのような人(Spotifyの用語ではギルドコーディネーター)が構想を組織にまとめ、勢いを維持させることもある。CoPは、定期的に集まって知識を交換し、コミュニティーの内部Webサイトやwikiを保守、拡張して知識を正式にまとめる。CoPが存続するのは、メンバーが学ぶところがある、または貢献できると思っている間だけである。

ただし、CoPを作成するのは、経験から得た知識を交換したり学習するためであって、依存関係や現在のタスクを調整するためではない。たとえば、スクラムマスターのCoPでは、新しいファシリテーション手法の学習を促進するかもしれないが、現在行っている仕事の実際の調整や依存関係の管理は、同じメンバーであってもスクラムのスクラム時に行われる。

革新と計画の反復は、コーディング道場やコーチングクリニックなどの活動のほかに、CoPが公式または非公式の学習セッションを実施するのにも適した時間である。

向上したいという人の欲求を奨励し支援するのはリーン-アジャイルなリーダーの役割である。それによって、企業の役に立つだけでなく、SAFeの第9原則で明示されているようにナレッジワーカーの内発的モチベーションを形成できるからである。


さらに知りたい場合

[1] Scaling Agility @ Spotify with Tribes, Squads, Chapters, and Guilds. https://dl.dropboxusercontent.com/u/1018963/Articles/SpotifyScaling.pdf

Last update:1 November 2015