SAFeのリーン-アジャイルの原則

作業の行い方についての意思決定はナレッジワーカー自身に任せるのが最適である。

─ピーター・F・ドラッカー

第9原則─意思決定を分散する

「リーンの家」で述べたように、目的は単純で、持続可能な最短のリードタイムで価値を納品することである。この目的を達成するには、分散した素早い意思決定が必要となる。上位の権限を持つ人に依頼しなければならない意思決定が発生すると、遅延につながるし、ローカルのコンテキストが足りなかったり、待っている間に事実パターンに変化が生じたりして、意思決定の精度が低下する可能性がある。意思決定を分散することで、遅延が減少し、プロダクト開発のフローが向上し、素早いフィードバックやより革新的なソリューションが可能になる。

ただし、あらゆる意思決定を分散するという意味ではない。意思決定の中には、戦略的で重大で影響が広範囲に及ぶため中央集権化するべきものがあり、そのような意思決定は管理者が行わなければならない。どちらの種類の意思決定も必要になるため、顧客にとっての価値のフローを確保するには、意思決定の枠組みを確立して知らしめることが重要である。

戦略的意思決定を中央集権化する

ナレッジワーカーに意思決定の権限を与えたとしても、戦略や最終的な成果について管理者が責任を負わなくていいことにはならない。管理者がその地位にいるのには理由がある。正しいビジネス成果へと企業を導くのに必要な、市場についての深い知識と、長期的な技術的視野を持ち、受託者責任を負い、財務状況を理解しているからである。管理者は、このような高いレベルの意思決定をする権限を与えられているし、与えられるべきである。

この中央集権化する意思決定とは、それほど頻繁には発生しない、影響が長期にわたる、スケールメリットが大きい意思決定である。

その他のすべてを分散する

しかし、大部分の意思決定は、戦略的に重要とみなされるこの閾値には達していない。これらは、頻繁に発生し、多くは緊急を要し、それほどスケールメリットが大きくない

そのような意思決定は、ローカルのコンテキストをよく把握し、複雑な技術を詳しく理解し、価値納品の最前線で毎日を過ごしている人たちに分散するべきである。

意思決定の枠組みを確立する

意思決定の権限を他人に委ねたからといって、よりよい意思決定をするためのリーダーとしての責任を放棄してよいわけではない。そのため、企業は、さまざまなレベルでの意思決定を可能にする意思決定の枠組みを確立するべきである。意思決定の枠組みでは、経済的枠組み(第1原則)を部分的に使用して、意思決定に使用するロジックと経済的理論を確立し、さまざまな役割に権限を委譲する。そして、その役割を担う個人やチームが意思決定を行ってそれを実施する。

効果的な意思決定の枠組みがあると、企業に多くの利点がもたらされる。たとえば、市場投入までの時間が短縮される、プロダクトやサービスの品質が向上する、などである。また、ナレッジワーカーの内発的モチベーションを解き放つ(第8原則)のにも役立ち、従業員の愛着レベルや個人の仕事の満足度が向上する。企業の業績と文化の両方が大きく改善するという結果もおそらくは得られる。


さらに知りたい場合

[1] Drucker, Peter F. The Essential Drucker.Harper Collins, 2001. (プロフェッショナルの条件、イノベーターの条件、チェンジ・リーダーの条件、ダイヤモンド社、2000)

[2] Reinertsen, Donald G. The Principles of Product Development Flow:Second Generation Lean Product Development.Celeritas Publishing, 2009.

Last update:11 May 2015