メトリックス

もっとも重要なことは測定できない。もっとも重要で長期的な問題を、前もって測定することはできない。─W・エドワーズ・デミング

動くソフトウェアこそが進捗の最も重要な尺度です。─アジャイル宣言

メトリックスの概要

システムを測定しパフォーマンスを評価するためのメトリックスに応じて、人は行動を変える。そのため、企業が設定した測定値を改善できるよう、自然に作業のやり方が変わる。ただし、実際には、ほとんどの測定基準が、本当の(多くの場合はとらえどころのない)結果の代用品でしかないため、扱いに注意が必要である。

作業の物理的特性、時間枠、素早いフィードバックを考慮すると、アジャイルでは、これまでのドキュメント指向の間接的なウォーターフォールベースの進捗測定よりも、本質的に測定が容易である。もちろん、圧倒的に優れた測定方法は、動くソフトウェアおよびソリューションを直接確認することである。チームや、アジャイルリリース列車、管理者、プログラム管理、ポートフォリオ管理者は、測定に関してこの重要な事実にもっと注意を向けるべきである。その他のメトリックスはどれも(後に挙げるさまざまなアジャイルメトリックスですら)、その目標や、高品質の動くソリューションを素早く納品することに集中し続けるという最重要の目的ほど大切ではない。

しかし、企業のコンテキストでは、測定は重要である。そのため、SAFeでは、フレームワークの各レベルのメトリックスに関して指針を提供している。以下のリンクを選択すると、このページの各項目に移動する。

ポートフォリオのメトリックス

リーンなポートフォリオメトリックス

ここで紹介する一連のリーンポートフォリオメトリックスは、ポートフォリオ全体に関する社内と社外両方の進捗を評価するのに使用できる、包括的だけれどもリーンな、メトリックスのセットの例である。「うまくいきそうな中でもっとも単純な測定のセット」の例を図1に示す。これは、いくつかのリーン-アジャイルな企業が移行時の総合的なパフォーマンスの評価に使用して効果を上げている、もっともリーンなセットである。

図1.  リーンなポートフォリオメトリックス

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ポートフォリオカンバンボード

ポートフォリオカンバンボードを使用する一番の動機は、プログラムインクリメントの境界に達する前にエピックイネイブラーの検討と分析が済み、適切な優先順位が付けられていることと、高精度の実装を行えるよう受け入れ基準が確立されていることとを保証するためである。さらに、図2に示すように、エピックとイネイブラーを追跡することで、どれが作業中でどれが完了しているかを理解することができる。

「レビュー」と「分析」の状態にはWIP制限があり(図2のカッコ内の数字)、PPMチームによって設定された制限が書かれている。カンバンの各状態の詳細は、「ポートフォリオカンバン」のページを参照のこと。

図2.  ポートフォリオカンバンボード

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エピックバーンアップチャート

エピックバーンアップチャートでは、エピックの完了に向けての進捗を管理する。測定対象は次の3つである。

  1. エピックの初期見積もりの線(青)─軽量ビジネス企画から見積もられたストーリーポイント
  2. 完了した作業の線(赤)─エピックの子フィーチャーおよび子ストーリーから集計した実際のストーリーポイント
  3. 完了した作業を累積した線(緑)─エピックの子フィーチャーおよび子ストーリーから集計した、完了したストーリーポイントの累積数

これを図3に示す。

図3.  エピックバーンアップチャート

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エピック進捗測定

エピック進捗測定により、プログラムポートフォリオ内の全エピックの状態が一目で見えるようになる。

  1. エピックX─エピックの名前を表す。ビジネスエピックは青(下記参照)、イネイブラーエピックは赤である。
  2. 棒の長さ─エピックの子フィーチャー/子ストーリーの現段階での見積もりストーリーポイント数の合計を表す。濃い緑の部分は完了した実ストーリーポイントを、薄い緑の部分は「仕掛かり中」のストーリーポイントの総数を表す。
  3. 赤い縦棒─軽量ビジネス企画を基にしたエピックの初期見積もり(ストーリーポイント数)を表す。
  4. 0000/0000─最初の数字はエピックの子フィーチャー/子ストーリーを集計した現段階での見積もりストーリーポイント数、後の数字はエピックの初期見積もり(赤い棒と同じ)を表す。

これらの測定結果の例を図4に示す。

図4.  エピック進捗測定

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エピック成功基準

各エピックには、範囲を確定し、フィーチャーをさらに詳細化するのに役立つ、成功基準を持たせる必要がある。図5は、あるイネイブラーエピックとその成功基準の例である。

 

図5.  イネイブラーエピックの成功基準の例

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エンタープライズバランススコアカード

エンタープライズバランススコアカードでは、4つの視点を使って各ポートフォリオのパフォーマンスを測定する。ただし、このアプローチは徐々に人気が落ち、現在はリーンなポートフォリオメトリックス(図1)の方がよく使われている。それでも挙げておくと、その測定項目は次の4つである。

  1. 効率
  2. 価値納品
  3. 品質
  4. 俊敏性

これらの測定項目は経営ダッシュボードにマッピングされる。それが図6および図7である。

図6.  測定項目を4つの関心分野に分ける「バランススコアボード」の方法
図7.  上記のメトリックスをアルファベット採点に変換して集計すると、企業のビッグピクチャーを可視化できる

この方法の詳細は、参考文献[2]の第22章を参照のこと。

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プログラムポートフォリオ管理の自己評価

プログラムポートフォリオ管理(PPM)チームは、自分の進捗を継続的に評価し、改善する。多くの場合、これは構造化された定期的な自己評価として行われる。PPMチームが下のスプレッドシートに必要事項を入力すると、自動的に図8のようなレーダーチャートが作成される。これにより、相対的な強みと弱みが明らかになる。

図8.  ポートフォリオの自己評価レーダーチャート

[wpdm_file id=89]

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価値のストリームのメトリックス

価値のストリームのカンバンボード

価値のストリームのカンバンボードを使用する一番の動機は、PI境界に達する前にシステム能力イネイブラーの検討と分析が済み、適切な優先順位が付けられていることと、高精度の実装を行えるよう受け入れ基準が確立されていることとを保証するためである。さらに、図9に示すように、フィーチャーを追跡することで、どれが作業中でどれが完了しているかを理解することができる。

「レビュー」と「分析」の状態にはWIP制限があり、カッコ内の数字として示されている。カンバンの各状態の詳細は、「価値のストリームのカンバン」のページを参照のこと。

 

図9.  価値のストリームのカンバンボード

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価値のストリームの予測性測定

価値のストリーム全体の予測性を評価するには、個々のアジャイルリリース列車(ART)の予測性測定値を集計して、全体としての価値のストリームの予測性測定値を作成する。これを図10に示す。

図10.  価値のストリームの予測性測定

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価値のストリームのパフォーマンスメトリックス

価値のストリーム全体のパフォーマンスを評価するには、個々のARTのパフォーマンス測定値を集計して、全体としての価値のストリームのパフォーマンスメトリックスを作成する。これを図11に示す。

図11.  価値のストリームのパフォーマンスメトリックス

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プログラムのメトリックス

フィーチャー進捗レポート

フィーチャー進捗レポートでは、PI実行中のフィーチャーとイネイブラーの状態を追跡する。任意の時点において、どのフィーチャーが予定通りでどのフィーチャーが遅れているかを示す。この図は次の2本の棒から構成される。

  1. 計画─フィーチャーに対して計画されたストーリーの合計数を表す。
  2. 実際─フィーチャーの完了したストーリーの数を表す。棒の色は、フィーチャーが予定どおり進んでいるかどうかに応じて、赤か緑になる。

図12にフィーチャー進捗レポートの例を示す。

 

図12.  フィーチャー進捗レポート:PI計画に照らした各フィーチャーの状態を明らかにする

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プログラムカンバンボード

プログラムカンバンボードを使用する一番の動機は、PI境界に達する前にフィーチャーの検討と分析が済み、適切な優先順位が付けられていることと、高精度の実装を行えるよう受け入れ基準が確立されていることとを保証するためである。さらに、図13に示すように、フィーチャーを追跡することで、どれが作業中でどれが完了しているかを理解することができる。

「レビュー」と「分析」の状態にはWIP制限があり、カッコ内の数字として示されている。カンバンの各状態の詳細は、「プログラムカンバン」のページを参照のこと。

 

図13.  プログラムカンバンボード

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プログラム予測性測定

リリース列車全体の予測性を評価するには、個々のチームの計画に対してどれだけのビジネス価値を達成したかの割合を集計し、全体としてのプログラム予測性測定値を作成する。これを図14に示す。

図14.  プログラム予測性測定

この方法の詳細は、参考文献[1]の第15章を参照のこと。

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パフォーマンスメトリックス

各PIの終了時点は、当然、重要な測定時点となる。図15は、プログラムのパフォーマンスメトリックスの例である。

図15.  ある列車のパフォーマンスメトリックスの表

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PIバーンダウンチャート

PIバーンダウンチャートでは、プログラムインクリメントの時間枠内での進捗を示す。PIに対して計画されている作業と、受け入れが済んだ作業とを管理する。

  1. PIバーンダウンチャートの横軸は、PI内の反復である。
  2. 縦軸は、各反復の開始時に残っている作業の量(ストーリーポイント数)を示す。

図16は、ある列車のバーンダウンの測定値の例である。PIバーンダウンチャートにはプログラムインクリメントの時間枠内でなされた進捗が表示されるが、PI中にどのフィーチャーを納品できるか/できないかは示されない。その情報は、フィーチャー進捗レポート(図12)を見ると分かる。

 

図16.  ある列車のPIバーンダウンチャート

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累積フロー図

累積フロー図(Cumulative Flow Diagram:CFD)は、進捗のさまざまな段階における作業の量を表す一連の線または領域で構成される。たとえばソフトウェア開発の場合、フィーチャーの典型的な開発段階は次のようになる。

  • じょうご
  • バックログ
  • レビュー
  • 分析
  • 実行
  • 完了

図17の累積フロー図には、開発の各段階にあるフィーチャーの数が、日ごとにグラフ上に示されている。

図17.  PI累積フロー図の例

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アジャイルリリース列車の自己評価

プログラムの実行はSAFeの中心的価値なので、アジャイルリリース列車(ART)はパフォーマンスを向上できるよう継続して努力する。そのために、PIの境界か、チームが立ち止まって組織やプラクティスを評価したい任意のタイミングで、下の自己評価フォームを使用することができる。時間と共にこのデータが変化していく傾向が、プログラムのパフォーマンスを示す重要な指標となる。図18は、自己評価フォームの結果の例である。

図18.  ARTの自己評価レーダーチャート

[wpdm_file id=59]

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チームのメトリックス

反復メトリックス

各反復の終わりは、合意済みの反復メトリックスを各アジャイルチームが収集するのに適したタイミングである。これは、チームの振り返りの定量的な部分で行われる。このようなチームのメトリックスの例を図19に示す。

図19.  あるチームの反復メトリックス

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チームカンバンボード

チームのカンバンプロセスは反復的に進化する。プロセスのステップ(定義─分析─レビュー─構築─統合─テストなど)とWIP制限を最初に定義したあと、しばらく実施すると、チームのボトルネックが見えてくる。見えなければ、チームは、状態を詳細化したりさらにWIPを削減することで、どの状態が「飢えて」いてどの状態がいっぱいかを明らかにし、より最適なフローになるよう調整を行う。

想定の正しさを確認していく過程で、WIP制限の調整やステップのマージ、分割、再定義が行われる。図20のチームカンバンボードでは、ボトルネックが明らかになっている。また、WIP制限も表示されている(最上部)。

図20.  あるチームの初期カンバンボード

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SAFeチームの自己評価

アジャイルチームはプロセスを継続的に評価し改善する。多くの場合、これは構造化された定期的な自己評価として行われる。この時間を利用して、結果を生み出すのに使用した主要プラクティスについて検討し議論する。その評価の一例が、次のスプレッドシートに含まれる、簡単なSAFeチームのプラクティス評価である。[wpdm_file id=61] チームがスプレッドシートに必要事項を入力すると、自動的に図21のようなレーダーチャートが作成される。これにより、相対的な強みと弱みが明らかになる。

 

図21.  チームの自己評価レーダーチャート

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さらに知りたい場合

[1] Leffingwell, Dean.Agile Software Requirements:Lean Requirements Practices for Teams, Programs, and the Enterprise.Addison-Wesley, 2011. (邦訳:アジャイルソフトウェア要求:チーム、プログラム、企業のためのリーンな要求プラクティス、翔泳社、2014)

[2] Leffingwell, Dean.Scaling Software Agility:Best Practices for Large Enterprises.Addison-Wesley, 2007. (邦訳:アジャイル開発の本質とスケールアップ 変化に強い大規模開発を成功させる14のベストプラクティス 、翔泳社、2010)

Last update 4 December 2015