Program Increment

実行を十分に重視していない人が多い。何かをすると確約したら、その確約を最後までやり遂げなければならない。

– Kenneth Chenault

想像するのと実際に行うのは雲泥の差だ。

– Barbara Sher

プログラムインクリメントの概要

プログラムインクリメント(PI)は、SAFeにおける最も大きい計画-実行-評価-調整(PDCA)学習サイクルである。アジャイルリリース列車(または価値のストリーム)にとってのPIは、アジャイルチームにとっての反復と同じで、完全なシステムインクリメントを構築して検証し、価値のデモを行って素早いフィードバックを得るための、リズムベースの期間である。PIという開発の時間枠それぞれの中で、リズムと同期によって、計画策定を促進し、WIPを制限し、フィードバックに値する価値を集約し、一貫したプログラムレベルの振り返りを確実に行う。PIは、スコープが大きいため、ポートフォリオレベルの検討事項やロードマップ作成について考えるときの数量単位にもなる。

PIによって、複数のチーム(とその作業の複数の反復)は、企業が注意を向けるに値する大きさの価値と時間枠に集約される。継続的インテグレーションとシステム/ソリューション妥当性検証は常に目標とされるが、PIの時間枠によっても完全なシステムの統合と検証を行う強制的な作用がもたらされる。これによって、統合が遅れたり、さらには社内外の顧客のフィードバックが遅れたりするリスクを、大幅に減らすことができる。

PIサイクルはリリースサイクルとは異なる。状況により、PIとリリースのリズムが一致すると、非常に便利である。しかし、プログラムによっては、PIのリズムとは異なる頻度でリリースしなければならないかもしれない。また、ソリューションの多種多様なコンポーネントについて、互いに依存しない複数のリリースサイクルが必要になることもある。

詳細

SAFeでは、開発のスケジュールをプログラムインクリメント(PI)内の一連の反復に分割する。ビッグピクチャーには、PIがPI計画セッションで始まり、その後に4つの実行反復が続き、最後に1つの革新と計画の反復が行われる様子が描かれている。このパターンは、参考にはなるが必ずしもこうである必要はなく、1つのPI内でいくつの反復を行うかについての固定の規則はない。経験から言うと、PIの期間は8~12週間にするのが最もよく機能し、その中でも最も短い期間が使われる傾向がある。

PIはPDCAサイクルの外側のループのリズムであり、PIによって、時間と価値の戦略的な単位が、開発中のソリューションを客観的に測定できる有意義なポイントに集約される。そして、「統合ポイントがプロダクト開発を制御する」[1]と言われるように、PIは、完全なシステムまたはソリューションの有意義で創発的な振る舞いを日常的に評価できるポイントとなる。

図1に示すように、価値のストリームアジャイルリリース列車(ART)のPIのリズムは同じである。

Figure 1. Value Streams and ARTs follow the same PI cadence
図1. 価値のストリームとARTのPIのリズムは同じ

PIは標準的なPDCA学習サイクルで実施される。PI計画はPDCAサイクルの「計画」であり、「実行」ステップはPIの実施、「評価」はデモで、検査と適応のワークショップが「調整」を表す。これは、価値のストリームでもARTでも同じである。これについては「連携」のページで説明する。

リズムに基づき開発する、随時リリースする

端から端まで続くPIの並びはアジャイルリリース列車のメトロノームとなる。ARTの資産は継続的かつインクリメンタルに増加する。ただし、ソリューションのリリースは別の問題であり、それについては関連する「リリース」と「リズムに基づき開発する、随時リリースする」のページで説明する。プログラムや価値のストリームでは、この原則に基づいて、自由に最適なプロダクト開発リズムを確立し、インクリメンタルな機能を継続的に構築する。ビジネス側は、ビジネスや市場で必要になったときに、自由にリリースを配置する。

プログラムインクリメントの実施

実施するときには、一連のプログラムイベントが「列車を軌道に乗せておく」ための閉ループ系となる。これを図2に示す。このプログラムイベントそれぞれについて、後のセクションで説明する。

Figure 2. Program execution events
図2. プログラム実施時のイベント

PI計画

それぞれのPIはPI計画セッションで始まる。この重要なイベントは、リズムが固定で日常業務的な性質を持つことから、日程を固定することができ、先のスケジュールまで(多くは最大1年など)決めることができる。そのため、設備や移動や諸経費などの処理コストを低減できる。

PI計画時に、チームはいつ何を納品するかを見積もり、相互依存関係を明らかにする。PI計画では、何を構築してデモするかを定義することで、統合とデモのプルイベントの基準点も作成される。PI計画の1つの成果物は、PI終了時にARTが何について統合およびデモの準備を完了できるかを詳細に記した、一連のプログラムPI目標である。

スクラムオブスクラムズ

リリース列車エンジニア(RTE)は、通常、週に一度(状況により必要であればもっと頻繁に)のスクラムオブスクラムズ(SoS)ミーティングを開催して、アジャイルリリース列車内の依存関係を継続的に調整し、進捗や妨害要因を可視化する。RTEとスクラムマスターと(必要に応じて)その他の人は、そのミーティングで、マイルストーンに向けた進捗と、プログラムのPI目標と、チーム間の内部依存関係の最新状況を伝え合う。このミーティングは30分未満の時間枠で行い、特定された問題の解決は「ミーティング後」に行う。このSoSミーティングの推奨アジェンダを図3に示す。

Figure 3. Sample Scrum of Scrums agenda
図3. スクラムオブスクラムズのアジェンダの例

PO同期ミーティング

SoSと同じように、プロダクトオーナープロダクト管理者が参加するPO同期ミーティングも頻繁に行われる。このミーティングは一般に週に一度行われるが、状況により必要であればもっと頻繁になる。PO同期ミーティングも時間枠が設定され(30~60分)、ミーティング中に特定された問題は「ミーティング後」に解決する。

このミーティングでは、RTEやプロダクト管理者がファシリテーターを務めることができる。このミーティングの目的は、プログラムPI目標の達成に向けてARTがどう進捗しているかを可視化すること、フィーチャー開発の問題と機会について話し合うこと、スコープの調整が必要であればそれを判断することなどである。このミーティングが次のPIの準備(後の説明を参照)に使われることもあるし、ミーティング中に今後のPI計画ミーティングに向けたプログラムバックログの洗練やWSJFによる優先順位付けが行われることもある。

注:図2に示すように、スクラムのスクラムとPO同期ミーティングは1つのミーティングとしてまとめて行われることがある。これはたいていART同期ミーティングと呼ばれる。

リリース管理ミーティング

リリース管理ミーティングでは、今後のリリースに向けてのガバナンスや、管理者との日常的なコミュニケーションを行う。これは週に1度行うこともあれば、プログラムの状況に応じて必要なときに行うこともある。リリース管理チームは、リリースを確実に行うために必要な、スコープやタイミングやリソースの調整を承認する権限を持つ。

システムデモ

PIの大きな特徴は、隔週で行われるシステムデモである。このデモは、開発中のシステムの有効性や使いやすさについて利害関係者からフィードバックを得るためのものである。このデモを行うことで、同じARTのチーム間で、定期的に(少なくとも反復ごとに1度は)統合を行うことができる。

次のPI計画イベントの準備

図2ではこの作業をイベントとして描いているが、実際には次のPIの準備は継続的な処理である。次の3つの事柄に重点をおいて行う。

  1. 計画に向けた管理の連携と組織の準備
  2. バックログの準備
  3. イベントの物理的な手配 – 設備の準備

このいずれかが欠けると成果(実際の具体的な確約済みのPI計画)に悪影響が出る可能性があるため、この3つの要因はすべて注意深く検討するべきである。

検査と適応

PIはPIの時間枠が過ぎると「完了」となる。各PIの後には最終のシステムデモを行う。これは、PI中に完成したすべてのフィーチャーを示す、発表に値するイベントである。これは通常、検査と適応(I&A)のワークショップの一部として行われる。このワークショップは、次のPIのベロシティーや品質や信頼性を向上するのに必要な、検討や問題解決や改善作業を行うために定期的に設けられた時間である。このワークショップの成果として一連の改善ストーリーが作成されるが、これを次のPI計画のバックログに追加することもできる。こうすることで、すべてのARTがPIごとに向上していく。

複数のARTが含まれる価値のストリームにおけるPIの実施

複数のARTを含む大きな価値のストリームでは、ソリューションの進捗に同じように焦点を合わせるにも追加のイベントや作業が必要になる。

価値のストリームのPI計画前/後ミーティング

PI計画前/後ミーティングを行うことで、大規模な価値のストリーム内のアジャイルリリース列車やサプライヤーは、次のプログラムインクリメントに関して整合の取れた計画を作成することができる。PI計画前/後ミーティングは、IP反復カレンダーを見ると分かるように(革新と計画の反復を参照)、プログラムレベル(実際の詳細な計画が立てられるところ)においてPI計画ミーティングの前後に行われる。

価値のストリームインクリメントとソリューションデモ

PI時間枠の中で、ARTは価値のインクリメントを複数構築し、それが積み重なってソリューションシステム能力となる。この新しいシステム能力は、システムの既存のシステム能力と一緒に、総合的に設計、開発、テスト、検証しなければならない。ソリューションデモは、PI学習サイクルにおける頂点である。これは、価値のストリームの利害関係者や顧客(または社内の顧客代理)や上級管理者に、今回のプログラムインクリメントにおけるソリューションの進捗を見せる、注目のイベントである。

このイベントで、価値のストリームは今回のPIで達成した事柄のデモを行う。上級管理者と利害関係者は、より広いソリューションコンテキストの中で進捗を確認する。この情報をもとに、取り組みの継続、調整、場合によっては中止、あるいは、さまざまな価値のストリームの予算の変更などについて、意思決定が行われることもある。

 


さらに知りたい場合

[1] Oosterwal, Dantar P. The Lean Machine: How Harley-Davidson Drove Top-Line Growth and Profitability with Revolutionary Lean Product Development. Amacom, 2010.

Last update: 15 September 2015