スクラムマスター

優れたリーダーは、まず優れた奉仕者でなければならない。

─ロバート・K・グリーンリーフ

スクラムマスターの概要

SAFeのチームは、アジャイルなプロジェクト管理とプロダクト納品フローを効果的に行うための軽量チームフレームワークであるスクラムXP(SBX)を使用する。スクラムマスターの役割は、1人のチームメンバーが担う。主な責務は、自己組織化および自己管理するチームが目標を達成できるよう支援することである。そのために、スクラムマスターは、SBXやSAFeの教育やコーチングを行い、SAFeの原則とプラクティスを導入してサポートし、障害を特定して取り除き、フローを促進する。

SBXチームは、スクラム、カンバン、XPなどの一連の手法からベストプラクティスを精選し、自分たちのプロセスを最適化する。スクラムマスターの役割は主に標準のスクラムのものがもとになっている。ただし、トランザクションベースまたはフローベースの手法を主に使用しているチーム(主にカンバンを利用)まで含めてどのSBXチームも、スクラムマスターの役割を効果的に適用し、チームが目標を達成したり他のチームと作業を連携したりできるよう役立てている。

詳細

スクラムマスターの役割は、1人のアジャイルチームメンバーに割り当てられる特別な役割であり、そのほとんどの時間は、他のチームメンバーのコミュニケーションや連携や協力を助けるために使われる。概して言うと、チームが納品目標を達成できるよう手助けする役割である。スクラムマスターは、チームにおける管理者の代理であり、チームが自己組織化および自己管理し、効果的なアジャイルプラクティスを使って納品するのを助ける、奉仕型リーダーである。スクラムマスターは、スクラムプロセスのルールや、チームが合意したその他のルールを支持し、適用して守らせる。また、チームがアジャイルリリース列車の他のチームと協力したり、必要に応じて管理者に状況を知らせたりするのを手伝う。

チームに関する責務

SAFeのスクラムマスターはチーム内の奉仕型リーダーであり、効果的に機能するために以下を行う。

  • リーン-アジャイルなリーダーシップを示す。リーン-アジャイルの考え方を持ったリーン-アジャイルなリーダーの振る舞いを見せる。チームがSAFeの中心的価値を受け入れ、SAFeの原則を導入して適用し、SAFeのプラクティスを実施するのを助ける。
  • ルールを守らせる。スクラムXPのルールは軽量だが、ルールはルールであり、スクラムマスターはそれを守らせる責任を負う。このルールには、スクラムやSBXのルール、WIP制限など、チームが合意したプロセスに関するすべてのルールが含まれる。
  • 目標に向けたチームの進捗を手助けする。スクラムマスターは、チームのファシリテーターとしての訓練を受けていて、チームを反復のゴールに集中させながら、古い開発方法に意義をとなえ続ける。チームが一定の水準の品質や予測性やフローやベロシティーを達成できるよう手助けする。また、チームが現在のPI目標の中で、毎日の目標や反復のゴールに集中できるよう支援する。
  • 容赦ない改善のためのチームの努力を指揮する。チームが自分の行動を改善し、責任を持つのを手助けする。チームの振り返りのファシリテーターを務める。問題解決の方法を教育し、チーム自身がよりうまく問題解決できるように支援する。
  • ミーティングのファシリテーターを務める。デイリースタンドアップミーティング、反復計画チームデモ反復の振り返りなど、すべてのチームミーティングでファシリテーターを務める。
  • プロダクトオーナーをサポートする。プロダクトオーナーはチームに対して特別な責任を負う。スクラムマスターは、そのプロダクトオーナーの仕事をサポートし、優先順位や範囲に関してチーム内の健全な力学を作り上げる。
  • 障害を取り除く。チームの作業を阻む問題の多くは、チームの権限を越えたものであったり、他のチームからの支援が必要なものであったりする。スクラムマスターは、反復のゴールを達成することにチームが専念できるよう、これらの問題に積極的に対処する。
  • SAFeの品質プラクティスを推進する。SAFeでは、チームが継続的に成果物の品質を向上し、完了の定義を満たすことができるよう、指針を提供している。スクラムマスターは、有能なアジャイルチームの特徴である技術的規律や技能という文化の育成を支援する。関連する専門技能コミュニティーを育成し支援する。
  • パフォーマンスの高いチームを作り上げる。チームの力学と能力を改善し続けることに重点的に取り組む。心の中の葛藤や、挑戦的な課題、成長の機会をチームが管理するのを手助けする。必要であればメンバーの問題を上位の管理者に伝えるが、それは内部的なプロセスでは目標を達成できなかったときに限られる。メンバーやチームの人事異動があったときに支援をする。
  • チームを守りコミュニケーションを行う。管理者や外部の利害関係者とのコミュニケーションを行う。仕事がむやみに追加されないようチームを守る。

列車に関する責務

スクラムマスターは、チーム間の協力を連携させ、チームが「列車に乗ったチーム」として効果的に稼働できるようにする。

役割への人の割り当て

スクラムマスターの役割は、チームの規模やコンテキストやその他の責務によって、1人のチームメンバーがそれに専念することもあれば、他の作業と並行して行うこともある。しかし、企業規模では、各アジャイルチームにフルタイムのスクラムマスターを割り当てる必要性を納得してもらうのが難しいこともある。企業が100の新しいアジャイルチームを作成する場合、100人のフルタイム開発者を選んで、開発もテストもしないこの新しい役割に割り当てることは、経済的にも政治的にも現実的ではない。また、スクラムXPを学習して使いこなせるよう、チームごとに1人のコンサルタントをフルタイムまたはその半分の工数で雇うのは、経済的に不可能である。そのようなことをすると、取り掛かる前に、そして、スクラムマスターという役割の価値を証明するチャンスもないうちに、転換が失敗してしまう。

そのためSAFeでは、実利的な方法を採用した。スクラムマスターは、一般的に、アジャイルチームメンバーやプロジェクトマネージャーやチームリーダーなどが、他の作業と並行しながら果たす役割だとしたのである。ただし、SAFe導入の初期には、この役割に大きな負荷がかかるかもしれない。その段階では、チームがスクラムやSAFeを習得するまで、外部のコンサルタントを雇って、現場でチームを指導してもらうと有益な場合がある。外部コンサルタントがコーチとして務めるスクラムマスターは、組織内の複数のチームを指導することが多い。


さらに知りたい場合

[1] www.scrumalliance.org.

[2] Leffingwell, Dean.Agile Software Requirements:Lean Requirements Practices for Teams, Programs, and the Enterprise.Addison-Wesley, 2011.邦訳:アジャイルソフトウェア要求:チーム、プログラム、企業のためのリーンな要求プラクティス、翔泳社、2014)

Last update:27 October 2015