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イノベーションは、誰がリーダーで誰がフォロワーかをはっきりさせる。

– スティーブ・ジョブズ

 

戦略テーマの概要

戦略テーマは具体的な箇条書きのビジネス目標であり、これによって、進化するエンタープライズビジネス戦略にSAFeのポートフォリオが結び付けられる。戦略テーマは、ポートフォリオ内の意思決定のビジネスコンテキストとなり、価値のストリームへの投資に影響を及ぼす。また、経済的枠組み、予算、ポートフォリオ、ソリューション、プログラムバックログについて意思決定するときの入力情報にもなる。

戦略テーマでは明白な事柄を改めて述べる必要はない。ポートフォリオビジョンのほとんどの要素はコンテキストがあってはじめて理解できるものだからである。ポートフォリオの利害関係者は一般に、ポートフォリオが何のためのものかをきわめてよく分かっており、独自の使命やビジョンを確立して管理している。それよりも、戦略テーマでは、現在の状態から未来の状態へと進む差別化要因を企業のために記述する。これは、効果的なポートフォリオソリューションがあって初めて達成できる革新や競合との差別化を進めるのに役立つ。戦略テーマは、協調して行う構造化された戦略計画策定プロセスの成果物として作成するのが最善である。このプロセスには、企業の役員や受託者、各ポートフォリオの主要利害関係者が参加する。

詳細

戦略テーマとは戦略的差別化要因を示すビジネス目標であり、この差別化要因によって、特定のソリューションポートフォリオに影響を及ぼす企業戦略の変化が明らかになる。これは、図1に示すように、企業とそのソリューションポートフォリオとの重要なコミュニケーション手段の1つとなる。

Figure 1. Strategic Themes connect a SAFe portfolio to the broader enterprise context
図1. 戦略テーマはSAFeのポートフォリオを企業という大きなコンテキストに結び付ける

それぞれのソリューションポートフォリオが、エンタープライズビジネス戦略を達成するのに関与し、その目的のために予算を割り当てられる。そしてポートフォリオビジョンのいくらかは、その戦略テーマを指針として作成される。

戦略テーマの策定

戦略テーマの定義は、戦略策定の一部であるが、1つのSAFeポートフォリオのコンテキストで行われる。企業のページを見ると、戦略テーマは協調プロセスの成果であるとされている。このプロセスでは、企業のポートフォリオ利害関係者が他のポートフォリオ利害関係者と協力して一連の入力情報を体系的に分析し、その後結論を出す。その様子を図2に示す。

Figure 2. Strategic themes collaboration
図2. 戦略テーマの協調作業

このプロセスへの入力情報には、通常、ビジネスの使命、財務上の目標と制約、競争環境、ポートフォリオコンテキストなどがある。(これについては企業のページで詳しく説明する。)

戦略テーマの例を以下にいくつか示す。

  • 若い世代にアピールする(オンラインショップ)
  • FOREX証券の取引を行うためのプロダクトと操作サポートを実装する(証券会社)
  • 3つのソフトウェアプラットフォームを画一的に使用できるようにする
  • 倉庫コストを下げる(オンラインショップ)
  • ポートフォリオアプリケーションから社内エンタープライズアプリケーションにシングルサインオンできるようにする(独立ソフトウェアベンダー)

戦略テーマは、ポートフォリオ全体に戦略を伝えるうえで重要なツールである。これは、記憶しやすい単純な基準系であり、ソリューション の納品にかかわる全員の思考に浸透するものでなければならない。

戦略テーマのポートフォリオビジョンへの影響

戦略テーマはポートフォリオビジョンの主要な入力であり、経済的枠組みの要素となる。また、価値のストリームアジャイルリリース列車の予算、ポートフォリオバックログ、個々のARTのビジョンとロードマップに影響を及ぼす。これを図3に示す。

Figure 3. Influence of Strategic Themes
図3. 戦略テーマの影響

それぞれの項目について、以下のセクションで説明する。

経済的枠組み

戦略テーマは経済的枠組みに大きな影響を及ぼすことがある。開発/サイクル時間、プロダクトの費用、プロダクトの価値、開発用支出、リスクなど、主要パラメータのどれにも影響する可能性がある。

価値のストリーム

ポートフォリオビジョンを実現するために必要な支出と人の割り当てには価値のストリームの予算が使われるが、戦略テーマはその予算に大きな影響を及ぼす。この割り当てを行うときには、以下の点を考慮する必要がある。

  • 価値のストリームや、価値のストリーム内のARTへの現在の投資には、現在のビジネスコンテキストの変化が反映されているか。
  • a)新規のプロダクトやサービス、b)現在のプロダクトやサービスのシステム能力の拡張、c)保守/サポート作業に対して、それぞれ適切な額が投資されているか。
  • 新しい戦略テーマに合わせてどのような調整が必要か。

ポートフォリオバックログ

戦略テーマは、ポートフォリオカンバンシステム内の意思決定フィルタとなり、結果としてポートフォリオバックログに影響を及ぼす。戦略テーマと同調することで、以下が生じる。

  • じょうご状態およびバックログ状態のエピックの特定、成功基準、優先順位が影響を受ける。
  • 分析状態の軽量ビジネス企画について検討や議論が行われるようになる。
  • 実装状態のエピックの分割方法や実装方法が影響を受ける場合がある。

ビジョンと優先順位

最後に、価値のストリームや列車も完全にポートフォリオビジョンのコンテキスト内で動く。そのため、戦略テーマが進化すると直接的に影響が及ぶ。ここで、プロダクトおよびソリューション管理は、戦略テーマをもとにビジョンとロードマップを改訂し、価値のストリームおよびプログラムバックログ内の項目に対するWSJFによる優先順位付けの属性を変化させる。ポートフォリオから流れてきた、あるいはローカルで発生したソリューションエピックやARTエピックもまた、現在のテーマから影響を受ける。さらに、戦略テーマは、列車間で概念的な整合を取るための重要な手段であり、その影響の大きさから、PI計画中にビジネス責任者によって示されることも多い。

戦略テーマに照らした進捗の測定

戦略テーマは企業の差別化のための戦略の意図を伝えるためのものである。戦略テーマの成功基準を定めて、意図に向けての進捗を理解するメカニズムとすることができる。ただし、戦略の意図が達成されたかどうかを示す望ましい測定基準の多くは、後で判明する指標である。ROIや参入した新市場などの成功要因を達成するには長い時間がかかる可能性がある。そういったものの代わりに、企業には早期の指標によるフィードバックが必要であるが、その多くの性質は財務的ではない。リーンな企業では、革新会計[1]によってこの問題に対処する。革新会計では、早期の指標のうちどれが長期的に望ましい結果をもたらすかを慎重に検討し、その後、そのデータを収集するためのツール、関数、テストなどのメカニズムを実装する。

さらに、成功基準の中には投資や作業に基づくものもある。たとえば、あるオンラインショップが「若い世代にアピール」したいとする。この場合、成功基準として投資と作業と早期の指標を組み合わせることができる。最初の学習マイルストーンは、単純に、モバイルプラットフォーム用にオンライン機能を拡張すれば対象ユーザーにアピールできるかどうかの仮説をテストすることなどである。おそらくこれは、フォーカスグループからの初期のフィードバックで測定できる。それに基づいて、第2ステップとして、モバイルチームの予算を増額する。それと並行して、ユーザーエクスペリエンス関連のエピックを使って、すべての購入ポイントにおけるユーザーの年齢を把握し、データの傾向分析を開始する。

戦略テーマの成功基準によって、ポートフォリオが関連ソリューションを理解し、ビジネス上/技術上の仮説を検証し、必要であればよりよいソリューションへと方向転換するための、学習マイルストーンが決まる。PIのリズムは、新しい方法を実験し、新しい戦略テーマへの投資が長期的な望ましい結果をもたらしそうだと示すのに必要なフィードバックを収集するための、優れた時間枠となる。


さらに知りたい場合

[1] Ries, Eric. The Lean Startup: How Today’s Entrepreneurs Use Continuous Innovation to Create Radically Successful Businesses. Crown Business, 2011. (邦訳:「リーン・スタートアップ」、日経BP社、2012)

Last update: 23 November 2015