連携

船長が2人いると船は沈む。

─トルコのことわざ

価値のストリームの連携の概要

価値のストリームは、もっとも基礎的なSAFeの構成要素である。リーン-アジャイルな企業が価値のフローを概念から納品までよりよく理解するための焦点となる。企業がさまざまなフローをよりよく理解すると、それを中心にした組織を作成し、無駄や不必要なステップや遅延を減らしてさらに最適化を進めることに注意を集中できる。こうすることで、持続可能な最短のリードタイムを実現し、引き続き短縮することができる。

そのため、ほとんど独立したものになるよう価値のストリームを組織化するのが理にかなっている。しかし実際には、価値のストリーム間の依存関係の連携が通常は必要になる。さらに重要なのは、価値のストリームの連携を効果的に行うことで、差別化した無類のソリューションを作成できることである。そのために、管理者や役員は、価値のストリームがもたらす課題やチャンスを理解し、適切であればできるだけ価値のストリームを独立させ、同時に企業の大きな目的に向けて相互接続し連携させる。

これをうまく行い、企業が価値のストリーム自体に分散と自治を与えると、結果として、素早い独立した価値納品を妨害されずに行うことができる。また、この価値は、相互接続の中にしか存在しないチャンスを効果的に利用することで、大幅に拡大することができる。

詳細

SAFeのポートフォリオレベルでは、価値のストリームが記述され、財源を割り当てられ、より大きな目的へと導かれる。ポートフォリオレベルは、企業全体を通じた価値のフローについて検討するための汎用メカニズムとなる。主な構成要素には、価値のストリーム自体、ビジネスおよびイネイブラーエピック(横断的な性質を持つビジネスの取り組みのためのコンテナの役割を果たす)、プログラムポートフォリオ管理の職務(それぞれの価値のストリームに予算を割り当てる)がある。

たいてい、価値のストリームはおおむね独立している。たとえば、ハードウェアまたはソフトウェアの事業がいくつかのプロダクトやサービスを販売していて、そのそれぞれが技術面で互いから切り離されているような状態である。しかしそれよりも、価値のストリームの間に依存関係があることの方が多い。依存関係はマイナス面でとらえられるのが普通だが、システム思考では価値はこの依存関係を通って流れると述べている。

さらに重要なのは、この追加の価値が独特で差別化されたものであることが多い点である。実際、一つにはこの依存関係のおかげで、企業は、同等のものを提供していない人には対抗できないソリューションセットや、さらには連携した価値のストリームにしか提供できない独自の創発的なシステム能力を作り上げる専門的技能を提供することができる。これを達成するには、図1に示すような、ポートフォリオ内で価値のストリームを連携させる方法を、詳しく検討する必要がある。

図1.  価値のストリームをまたがった連携の詳細

価値のストリームの連携について、主な点を以下のセクションで説明する。

リズムと同期

まず、図1は、リズムと同期の原則が、価値のストリームやプログラムと同じように、ポートフォリオレベルにも適用されることを示している。利点は同じで、日常業務を日常にする(結果として変化に伴う処理コストを軽減する)ことと、複数の価値のストリームのソリューション開発のさまざまな側面を同期させることである。また、共通のリズムがあることで、ポートフォリオレベルのソリューションが(ビジネスエピック経由で)確実な計画と統合ポイントに合わせて前進することになる。この統合ポイントそれぞれが、開発中のソリューションセットの客観的な評価を得る機会となる。このポイントは、本当の意味でポートフォリオのベロシティーを測定する唯一の点である。ポイントが多いほど、学習が速くなり、市場投入までの時間が短くなる。

ポートフォリオレベルの新しい作業の追加

図1には、もう1つの要点が示されている。ポートフォリオのリズムによって、ポートフォリオレベルの新しい作業をシステムに追加投入できる速度とタイミングが決まる、という点である。各プログラムインクリメントの途中では、価値のストリームとアジャイルリリース列車は、そのPIで確約した目標を達成することに集中して、どうしても「うつむいて」いる。その間に新しい作業がシステムに追加されると、明らかに、かなりの中断やタスク切り替えや再調整が発生し、人やその他のリソースが新しく改訂された目標に移動することになる。チームがすでに確約した事柄を達成し、かつ、計画にない新しい作業を追加することは当然不可能なので、このポートフォリオのリズムを、新しいポートフォリオ作業を導入するためのメトロノームとして使用する。これは、企業が当てにしている予測性をプログラムが達成するのに役立つ。

このポートフォリオのリズムは、エピックオーナーなどがポートフォリオカンバンシステムを通してエピックを管理するための定期的なメカニズムにもなる。境界に達したときにまだ準備ができていないエピックは、リソースが空いていたとしても、次のタイミングまで作業対象になるのを待たなければならない。リズムによって提供されるこの時間枠が、システムに投入されるこのような大きな新しい作業に対して仕掛かり作業を制限することも多い。

プログラム管理、内容管理、エンタープライズアーキテクチャー

SAFeのこの最高レベルで必要な連携をサポートするために、図2では3つの主な役割を示している。このそれぞれが、プログラムレベルと価値のストリームレベルの同等の役割に該当する。

図2.  プログラム管理、内容管理、アーキテクチャーのトロイカ

この「トロイカ」は、ポートフォリオの取り組みの実行を成功させるために必要な3つの主な職務である。

  • プログラム管理。PPMという職務はフレームワーク内の最上位のガバナンス機能を持つため、プログラムマネージャなどチームのチームのチームを支援できるスキルと経験を持つ人が、戦略的意図を確実に実施するのが合理的である。この役割は、価値のストリームとプログラムのレベルに示されている価値のストリームエンジニアとリリース列車エンジニアの役割にそれぞれ直接該当する。
  • ソリューションポートフォリオ管理。統合されたポートフォリオソリューションセットを、より大きな内容の意図に向けて導く人も必要である。この責務はソリューションポートフォリオ管理の役割に割り当てられる。また、この役割は、価値のストリームとプログラムのレベルのソリューション管理とプロダクト管理の役割にそれぞれ直接該当する。
  • エンタープライズアーキテクト。エンタープライズアーキテクトも、価値のストリームレベルやプログラムレベルの役割と同様の役目を果たす。この役目とは、共通の技術的基盤を確保できるよう支援する、価値のストリームをまたがったユースケースを定義する、資産や作業の不必要な重複を避けられるよう支援する、などである。

リズムと同期と分散型の計画をサポートするために、これらの役割は、他のポートフォリオレベルの利害関係者と一緒に、PI計画前/後ミーティングにも参加することがある。

ポートフォリオロードマップ

もちろん、ポートフォリオのこのレベルでは、意図の計画が明らかになっていなければならない。図1に示すように、ポートフォリオロードマップは、新しい内容(主にエピックという形を取る)が意図の計画にどう貢献するかを明示する便利な成果物である。さらに、この高いレベルのロードマップを使うことで、低いレベルのロードマップとそれに関連するマイルストーンのさまざまな側面を統合して、企業の利害関係者に全体像を伝えるのに適した包括的ビューにまとめることができる。

配置とリリース

価値のストリームと依存関係の性質によっては、統合された価値を配置するために、このポートフォリオレベルでも有能なDevOpsの能力が必要な場合がある。DevOpsという職務については主にプログラムレベルと価値のストリームレベルで説明しているが、多くの場合、必要になるのはそれらのレベルでの能力だけである。しかし、そうでない場合には、ポートフォリオレベルの要素を特別に考慮する必要があり、ソリューションをポートフォリオレベルのリリースに統合するための専用または共有のサービスシステムチームを作成することがある。


最終更新日:2015年9月18日