Value Stream Level

価値のストリームのある部分を犠牲にして別の部分を最適化した場合や、部分どうしがうまく適合しない場合(顧客はぜいたくだけれどサプライヤーが低価格低品質であるなど)には、プロジェクトとプラクティスは失敗する。

- Alan C. Ward

価値のストリームレベルの概要

価値のストリームレベルは、大規模で複雑なソリューション(通常は複数のARTやサプライヤーの協力が必要となるようなソリューション)を構築する場合を対象としている。このレベルには、SAFe 4.0で新たに追加されたいくつかの構成要素が含まれる。そのほとんどは、ソフトウェア、ハードウェア、電気/電子、光学、力学、流体工学などを含む多くの専門分野にまたがるサイバーフィジカルシステムを構築しようとして、非常に大きなシステム上の課題に直面した、企業からの情報に基づいて設計されている。このようなシステムを構築するには、たいてい、数百人や場合によっては数千人の実務者と、社内外のサプライヤーが必要である。このようなシステムはミッションクリティカルである。ソリューションが失敗すると、あるいはサブシステムが失敗しただけでも、その経済的社会的損失は受け入れ難いレベルである。

これは非常に深刻な問題だが、従来のステージ-ゲートの方法ではこの規模の課題にうまく対応できるとは限らない。適切な経済的利益と有効で安全なソリューションを納品するには、もっとリーンでアジャイルな方法が必要である。SAFeは全般的にこれに対応しているが、今回、価値のストリームレベルを追加して、非常に規模の大きいシステムに特に重点的に対処している。これは、世界最重要レベルのシステムを定義、構築、配置する人に向けたものである。

詳細

SAFeで価値のストリームレベルを使用するかどうかは任意である。ほとんど独立したシステムや数百人の実務者で構築できるシステムを構築する企業では、このレベルの構成要素は必要ない可能性がある。その場合には、「折りたたみ表示」した3レベルのSAFeを使用するとよい。ただしその場合でも、決して小さなシステムではないため、価値のストリームレベルの構成要素を3レベルのSAFeで使用することは可能である。結局のところ、SAFeはフレームワークなのだから。

しかし、このレベルの主な目的は、大規模でミッションクリティカルなソリューションを定義、構築、配置するという大きな課題に対応できる、リーン-アジャイルなシステム開発方法を記述することである。

そういったソリューションをリーン-アジャイルな方法で構築するには、構成要素や成果物や連携が余分に必要である。そのため、このレベルには、価値のストリームの意思決定の財務上の境界となる経済的枠組みソリューションの意図した振る舞いと実際の振る舞いのリポジトリとなるソリューションの意図、配置環境の中にソリューションがどう納まるかを記述するソリューションコンテキスト、そしてソリューションの大きいレベルの振る舞いを記述するシステム能力が含まれる。

プログラムレベルと同様に、価値のストリームレベルもプログラムインクリメントを中心に構成される。このプログラムインクリメントは、価値のストリーム内のすべてのアジャイルリリース列車で同じタイミングで実施される。これは、複数のARTやサプライヤーに対してリズムと同期を提供するもので、PI計画前/後ミーティングやソリューションデモが含まれる。

追加の役割も定義されている。具体的には、ソリューション管理ソリューションアーキテクト/エンジニアリング価値ストリームエンジニアである。

主な役割

プログラムレベルの「トロイカ」(三頭制)と同じように、価値のストリームにも、価値のストリームを調整して前に進めるために必要な3つの重要な役割である独自のトロイカがある。図1にそれを示す。

Figure 1. Value Stream Mgt-Content Mgt-Arch troika
図1. 価値ストリームエンジニア、ソリューションアーキテクト/エンジニアリング、ソリューション管理のトロイカ

実行と改善 – 価値ストリームエンジニアは、価値のストリームの乗務員のリーダーである。価値のストリームがスムーズに動いていること、価値のストリーム全体にわたってボトルネックが特定されて解決されていることを確認する責任を負う。価値のストリームレベルのミーティングのファシリテーターを務め、メトリックスによって価値のストリームカンバンと価値のストリームの健全性を監視する。

内容の管理ソリューション管理は、顧客のニーズやポートフォリオビジョン戦略テーマを代弁する。ARTのプロダクト管理と協力してシステム能力を定義し、フィーチャーに分解する。価値のストリームのバックログWSJFを使ったその優先順位付け、そしてARTと アジャイルチームの意思決定プロセスを規定する経済的枠組みの作成に責任を持つ。

優れた技術ソリューションアーキテクト/エンジニアリングは、複数のARTにまたがってソリューションを接続する包括的アーキテクチャーの定義を担当するチームである。また、システムアーキテクト/エンジニアリングチームと協力して、列車が開発するアーキテクチャーの指導も行う。

ソリューションの定義

ソリューションの振る舞いと決定事項はソリューションの意図の中で管理される。ソリューションの意図は、真実を含む唯一の情報源であり、同時に、変動から固定へと推移する要求のコンテナでもある。全域パレットによりこのレベルでも使用できるビジョンとロードマップの他に、適応型の方法でソリューションの意図を作成するときには、次に示す3つの追加プラクティスが役に立つ。

  • モデルベースシステムエンジニアリング(MBSE) – 創発的な要求および設計を、より柔軟で利用しやすいモデルを使って開発、文書化、保守する方法が記述されている。
  • セットベース設計 – 選択肢を維持し、時間が経つにつれて要求を変動から固定へと移行させるプラクティス。このとき、意思決定は、責任を負うことができる最後の瞬間まで遅らせる。
  • アジャイルアーキテクチャー – アジャイルチームによってジャストインタイムで構築される創発的な設計と、上級技術リーダーおよびチームと協力して作成する意図的なアーキテクチャーとのバランスを取る作業をサポートする。

ソリューションの構築

価値のストリームレベルの主要構成要素はソリューションであり、これは価値のストリームの主題である。ソリューションは3レベルのSAFeのプログラムレベルにも登場するが、追加のプラクティスや詳細はこのレベルで説明する。

ソリューションは、ソリューションの意図に記述されたとおりに振る舞うが、ソリューションコンテキスト(配置されたソリューションが動作する環境の特徴を記述したもの)の大きな部分の中に存在するものでもある。ソリューションは、顧客のニーズを満たすために構築され、システム能力とイネイブラーから構成される。システム能力とイネイブラーは価値のストリームのビジョンおよびロードマップを実現するために必要なものである。

システム能力は価値のストリームのカンバンシステムを通って管理される。システム能力は、評価および分析が済んだことをこのカンバンシステムによって確認されてから、価値のストリームのバックログに入れられ、その待ち行列で実装を待つことになる。これは、焦点を絞るためのメカニズムとしても働く。また、WIPを制限することで、すべてのARTが同期すること、協力してシステム能力を納品する処理能力を持つことを保証できる。規模の大きい取り組みはソリューションエピックとして管理され、分析時にシステム能力に分解される。

多くの場合、規模の大きいソリューションでは、価値のストリームのためにコンポーネントやサブシステムやシステム能力を開発するサプライヤーが必要になる。こういったサプライヤーは価値のストリームレベルのミーティングに参加する。

ARTの連携

価値のストリームレベルのもう1つの機能は、協力してソリューションを納品する複数のARTの連携の処理である。これをサポートするために、価値のストリーム内のすべてのARTは1つのPIのリズムで同期する。ARTや場合によってはサプライヤーとの協調がやりやすいよう、反復も同期する。

各PIの開始時に、すべてのARTについての計画を同時に作成する。この計画策定は、ART自身によってPI計画ミーティングで行うが、足並みを揃えて全列車に関する1つの計画を作成し列車間の依存関係を管理できるよう、それ以外にPI計画前/後ミーティングも開催する。その結果として、価値のストリームのPI目標がまとめられ、それを利害関係者に伝えることができる。

各PIの終了時に(通常は次のPIに少し入った頃に)、ソリューションデモを行う。これは、価値のストリームが、ポートフォリオや他の価値のストリームの顧客や利害関係者に対して、すべてのARTやサプライヤーにまたがって統合したソリューションを見せる、重要なイベントである。このデモの後で検査と適応のワークショップを行い、価値のストリーム全体のプロセスを改善する。

3レベルのSAFeで価値のストリームの構成要素を使用する

既に述べたように、価値のストリームレベルの構成要素の一部は、複数のARTで実現しなければならない大規模な価値のストリームに主に関係するものだが、3レベルのSAFeの環境におけるARTに適用できるものもある。該当する構成要素にはソリューションの意図やその関連プラクティスなどがあり、これは高保証システムを構築する際には特に必要である。ソリューションコンテキスト、経済的枠組み、サプライヤーとの連携のための指針なども適用できることがある。これらは(顧客やソリューションのように)3レベルのSAFeの「折りたたみ表示」のプログラムレベルには「降りて」こないが、やはり関連性はあり、必要であれば多くのプログラムで使用できるし使用するべきである。


Last update: 2 November 2015